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整備工場の『仕事を科学する』
1 仕事を科学する

はじめに

「カキーン」 いい当たり。さすがライトのイチロー、スタートが早い。落下点へ真っ直ぐに走って、ゆうゆうと捕球。
 こんな光景をよく目にします。さすがにプロ野球です。我々の草野球ではなかなかこうはいきません。遅いスタートで、ギリギリのランニングキャッチをしたりするものですから、かえってファインプレーに見えたりします。
 ゴルフでも似たようなことが良くありますね。もちろん、スコアと歩いた距離。私などどういう訳か(まあ、理由ははっきりしているのですが)あの広いフェアウェーにはボールがなかなか転がらなくて、こっちの林からあっちの林へとウロウロしています。お陰で良く晴れた日にゴルフ場にでかけても、林の中ばかりでは日にも焼けず、相も変わらず歩きくたびれています。
 ゴルフや野球の話を持ち出したのは他でもない、ここで書こうとしているIE(インダストリアル・エンジニアリング)について説明をしようと思ったからです。簡単に言うと、『IE』というのは『どうしたら、楽に、正確に、早くできるか』ということを学問の立場から研究したものなのです。
 技術者の仕事振りについて、昔から『安正早楽(あん・じょう・そう・らく)』という言葉があります。安全に、正確に、早く、楽に、という風に仕事ができるようになることが最高の技術ということなのでしょう。先のゴルフや野球の例でも、うまい人はどう見てもラクをしています。歩く距離は短いし、時間も早いというわけです。どうすればラクができるか学問するなんて、おもしろい研究ですね。

IEという名の魔法の虫めがね

インダストリアル・エンジニアリングつまりIEは、19世紀の終り頃にアメリカで研究が始まり、日本では戦後になって活発になりました。経営工学や管理工学とも訳されており、どちらかというと、自動車メーカーなど大量生産の会社で発展をした技術と言えます。
初期の研究では、レンガ積みの仕事や貨車に石炭を積み込む仕事を、どうすれば楽にできるかという研究から始まっています。ベテランと下手(へた)な人を比較して分析する中から、驚くほどたくさんのことが明らかになってきたのです。
 私も、この『楽をする仕事の研究』があまりにもおもしろいので、生産工学とかインダストリアル・エンジニアリングなどと難しいことを言わないで、タイトルの『仕事を科学する』というキーワードで、整備工場の仕事振りを次々と分析してみました。
「なんどもなんども、立ったりしゃがんだり。相当に疲れるだろうなあ」
「同じ作業をするのに、彼は20分も早い。どこが違うのだろうか」
「どうしてこんなに歩き回ってばかりいるのだろう。あっ、ついに走りだしたぞ」
 こんな風に工場の片隅で、みんなの仕事振りを観察していると、たくさんの疑問が湧いてきました。そして、その疑問の一つひとつを分析して数字に置き換えてみると、みるみるうちに不思議が解けてゆくのでした。言い換えれば、『仕事を科学すると、打つ手が見えてくる』とでも言うのでしょう。私はこのIEという『魔法の虫めがね』を使って、片っ端から整備工場の苦労を科学してみたのです。そして、その成果を『楽をする仕事の研究』として、おもしろく解説して見ることにしました。

なんと、歩いた距離2334m

車検整備をするメカニックの後ろを、金魚の糞のように、ずっとついて歩きました。そして、歩いた経路を図式的に書いてゆきます。これが専門用語で『動線図』と言われるものです。このように作業者がいつ、どこで、なにをしたのか、つぶさに記録していく調査をIEでは『作業分析』と呼んでいます。このメカニックの動線図は、真っ黒になってしまいました。この分析から、彼は車検の基本作業だけで作業時間230分、作業ポイントは155か所、そして全部で2,334m歩いていることがわかりました。異常に歩行距離が長いのです。歩いて行った先が、この図では割合近いように書いてありますが、この工場の部品庫は2階にあったので、階段を走って部品を取りに行っていました。
動線図

躾(しつけ)が行き届いているお陰で、工場の隅にある共用工具置き場からインパクトレンチなどの工具を借りてくると、必ず返しに行きますから、倍の距離を歩くことになります。こんな訳で、歩きに歩いたり、1台のクルマで2,334mにもなったのです。
調査をしたと同じ基本作業の部分だけで、1,110mというメカニックもいましたから、その差1,224mはまさに上手(じょうず)、下手(へた)の違いと言っていいでしょう。あっちの工具置き場からこちらのクルマへ、こっちの事務所からあちらの部品庫へと走り回っている姿は、まるで私がゴルフに出かけたときみたいです。
「使用する部品は、作業にかかる前にまとめて持って来ておこう。いつも使う部品は、作業ベイのそばに常備しておこう」
「共用工具置き場は、離れた片隅ではなくて、どのベイからも近い、工場の中央に置こう」
「二つある共用工具なら、二か所に分けて置いてもいいじゃないか」
「どうして人によって、これだけ作業時間が違うのだろう。早くて、楽にできる手順をみんなで真似をしよう」
こんな風に、ベテランと経験の浅い人を比較した作業分析の結果から、いろんなアイデアが出てきました。普段何気なくやっている作業を『IEという魔法の虫眼鏡』で見ると、目のつけどころや改善のヒントがいくつも見えてくるのです。

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整備工場の「仕事を科学する」整研出版社
くるまや しん兵衛 著
A5判 271頁 定価 1,890円(税込み)
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