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整備工場の『仕事を科学する』
2 稼働分析で1日の使い方を調べる

「俺はだいじょうぶ。そんなに歩いていないなぁ。工場のみんなもそうだよ。第一そんなに歩いてばっかりいたら、疲れてしまい仕事にならないっすよ」
2334m歩いたという真っ黒な動線図を見て、ある工場の中堅メカニックがそんな風に言っていました。<自分はそんなに歩いてばかりいるとは思わない。工場のみんなもそうだ>というわけです。そこで、ごくフツーの工場で、ごくフツーのメカニックたちが、普段どんなことに時間をかけているか調べてみました。メカニックたちが意識していようがいまいが、『魔法の虫めがね』で見てみると、意外なところに時間を取られていることが分かります。

お父さんは、テレビばっかり!

メカニックたちが、どんな時間配分で一日を過ごしているか分析するときに、IEでは『稼働分析』といううまい方法があります。これまでの『動作分析』が仕事の質を見ているのに対して、この『稼働分析』は時間の使い方を分析する『魔法の虫めがね』と言えます。
今回はワークサンプリングというやり方で調査しました。この方法は、その工場で仕事をしている人たちを5分ごとに、例えばカメラで写真を撮ったりして、そのときに何をしていたかを集計するものです。
分かりやすく、ある家庭の日曜日をこうして分析してみたとします。お母さんは食事の準備がトップで26枚、2番目に洗濯が15枚、そして3番目は掃除で10枚集まったのに対して、お父さんはテレビを見ている写真がダントツの43枚あったとすると、やはりお父さんには何かもう少し身体を動かす、庭の手入れでもしてもらったら・・・ということになりそうです。写真の枚数が多いということは、それだけ多くの時間を割(さ)いていたということで、一日をどんなことに時間配分していたかがおよそ分かるのです。

俺たちの腕前だからこそ出来る仕事は?

さて、この方法でこんどは整備工場をながめてみました。メカニック一人ひとりを金魚のフンのようについて歩き、目に見えない心のカメラでパチパチとその瞬間の動作を写していきます。それを分析したのが、このデータです。

稼働分析 
グラフ1整備工場の稼働分析

ボルトを締めたり、部品を交換したり、電気信号をチェックしたりする、純粋に整備の仕事を『主体作業』と名づけました。『付随作業』というのは主体作業をするのに必要な、例えば工具を取ったり、機械を操作したり、車を移動する動作などを言います。また『間接業務』というのは書類を書いたり、打ち合わせをしたりする仕事です。
グラフ1を見てください。メカニック達が一生懸命汗をかいている時間、つまり身体を動かす仕事に専念している時間は、確かに65%(間接業務とその他を除いたもの)ありました。しかし、高度な技術である国家整備士の資格を発揮できる仕事、つまり、自動車を整備している時間(グラフの中の主体作業と付随作業を足した部分)はおよそ41%です。
さらにその中で、『これで、お金をもらっている!』といえる仕事(主体作業の部分)は29%しかないことが明らかになったのです。厳しい見方かもしれませんが、お金にならない動き、つまり工具置場や部品倉庫へ歩いて行ったり、必要な工具を探したり、車を移動したりするなどの比率も、ずいぶん高いことが分かりました。

主体作業の比率を高めることが決め手

散髪屋さんを想像してみてください。髪を切ること、髭を剃ること、頭を洗うことなどは、どれもお金をもらうために、必ずやらなければならないことです。それも時間をかけてしっかりと。
ところが一方、ハサミやタオルを取りに行ったり、髪を洗う前に身体につけるあのビニールを着せたり、髭剃りの石鹸の泡や蒸しタオルを準備したりすることは、髪を刈ったり髭を剃ったりの主体作業をするために伴なう作業、つまり付随作業といわれるものなのです。したがって、この付随作業というのは、どれもテキパキとすることが大切だし、もしかすると工夫によっては止めることができるかもしれません。もちろん補助の人に並行して同時にやってもらえば、散髪もうんと早く終わり、お客さんにも喜んでいただくことができます。
いつもの魔法の虫めがねで、さきのグラフ1を見ていると、整備工場でも
「お金になる仕事をしている時間は29%しかない。この時間の比率を増やして行くのがポイントだな」
こんな風に改善の目のつけどころが、つぎつぎと浮かんできます。腕に覚えのあるメカニックは、『これで、お金をもらっている!』という主体作業の時間をどうやって高めるか考えてみてください。

やっぱり、歩いていたんだ!

主体作業の比率を下げている要因のいくつかを取り出してみました。

ワースト5
グラフ2 主体作業の比率を下げているワースト5

目的のよく分からない歩きだけを『歩行』としましたが、『ベイ外工具取り置き』なども遠くまで歩いているので、ほとんど歩行の時間です。このふたつだけを合わせても11.6%になり、一日のうち最低90分は、ただ歩いていることになります。
「俺たち、そんなに歩いていないなぁ」と思っていても、やっぱり遠くまで歩いてばかりいたのです。まっ黒になった動線図を思い起こしてください。2,334mという数字も無理はないですね。
『工具の取り置き』もベイ外とベイ内を合わせて、誰もが90分になります。驚きです。なにをそんなに工具に時間をかけているのか、その原因については次節で分析します。

工場を、無人の倉庫にしてはいけない!

グラフ1で、お金になる仕事の比率が意外と低いと指摘しましたが、それに比べて多いのが引取り・納車の時間です。誰もが毎日2時間かけていることになります。もし、この仕事がなければ、みんなが毎日2時間も早く帰ることができる勘定ですから、この改善がどんなに大きな宝物か想像できます。
メカニックが整備の仕事に専念するためには、営業とサービスの仕事の分担、つまり引取り・納車の分担にメスを入れることの大切さがよく分かります。
 つぎのグラフ3は、先程の円グラフの中の主体作業の比率、つまり、お金になる仕事の比率を、朝から夕方まで時間帯別に折れ線グラフにしたものです。

時間帯別のお金になる仕事
グラフ3 時間帯別のお金になる仕事

昼間こそ30%を越えていますが、朝の1時間と夕方の1時間半は、ほとんど仕事をしていません。もちろん、メカニックたちは朝から晩まで一生懸命汗を出しているのですが、『なおす』『交換する』『調整する』といった、車の付加価値を高める整備作業、つまりお金になる仕事は、朝夕はたった10%前後のレベルなのです。引取り・納車が朝夕に集中するためなのですが、『1日を5時間で暮らすいい男』と表現してもいいほど状況が、まさにこの数字に出てきています。「工場を、無人の倉庫にしてはいけない!」という気持ちからも、引取り・納車についてみんなで真剣に考えてみてください。

書籍のご案内
整備工場の「仕事を科学する」整研出版社
くるまや しん兵衛 著
A5判 271頁 定価 1,890円(税込み)
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